アトピーを通して教えられたこと

(2000年12月仙台福音自由教会月報掲載)

それは、卒業論文のために忙しかった９８年冬のある日でした。寒い中、薄着でランニングをした日の夜、突然眠れないほどの猛烈な痒みがあり、翌朝になってもその痒みは止まりませんでした。同時に、左眉のあたりに白いものが出来始めました。始めは乾燥肌かと思うほどでしたが、年明けの１月には化膿してきたのです。その頃にはさすがに普通ではないと感じましたが、ステロイド治療の恐ろしさを聞いたことがあったので、皮膚科には通わず、素人療法にこだわり続けた結果、顔の症状は悪化の一途を辿りました。このころは自分の顔の醜さへの憂鬱と、体中の痒みで研究に全く集中できませんでした。その後、教会の姉妹より紹介された皮膚科で頂いたクスリを使うことで、好転し始めましたが、それまでの日々は自分にとっては本当につらいときでした。人の目を直視できず、朝起きて鏡を見てはガッカリし、夜は勝手に顔をかかぬよう紐で手を縛り、それでも耐えきれずにかきむしっては、せっかく出来たカサブタをはがして逆戻りしたりして、それがまた心を苦しめました。

幸い、今は光線治療などにより完治といってもいいほど治り、痒みも殆どありません。しかし、２年を経たいま思い返してみると、この経験がどれだけ自分に必要だったかが分かるのです。それまでの自分は、人の痛みが分かりませんでしたし、分かろうとも思わない人間でした。小中学生の頃、重いアトピー性皮膚炎の女の子が同じ学年にいました。彼女は「ドビャー」というあだ名を付けられ、「うつるぞ！」と避けられ、廊下を歩くときは皆がよけて通るなどのいじめを受けていました。どんなにそれが苦しみだったことでしょうか。自分も同じ経験をしてみて、初めてその痛みが少し理解できました。と同時に、自分の弱さもイヤというほど知らされました。外見や能力にアイデンティティを置いてきた自分が、それを失った時どれほどみじめな思いをするか、分かりました。

そして、らい病人に手を触れていやして下さったイエス様の愛を知ったのです。イエス様も、人々から同じように虐げられ、白眼視され、苦しめられたのにもかかわらず、です。もしこの痛みを通らされなければ、このことは分かりませんでした。だから、神様に感謝します。この病気を与えて下さったことに感謝します。これからどうなるかはわかりません。また悪化するかも知れないし、このままかもしれません。しかし、どんなことになっても、それは神様が与えて下さった訓練のときであると信じています。

「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたのおきてを学びました。」詩篇119:71

本当に、こころからこのみことばの通りだと思います。試練を通して教えて下さる神様に感謝！